-
目次
4.「事業」の適正性、安定性、継続性
⑴適正性について
⑵安定性・継続性
・事業の継続性と決算状況
①直近期又は直近期前期に売上総利益がある場合
②直近期及び直近期前期に共に売上総利益がない場合
4.「事業」の適正性、安定性、継続性
⑴適正性について
日本で適法な業務であれば、中華料理店、風俗営業店、整体院、中古車販売等、業種の制限はありません。
経営者・管理者として日本に招へいされる場合、招へい元企業は、外国企業だけではなく、日系企業もOKです。
非営利法人であっても、その活動が適正で、事業の安定性・継続性が認められれば、営利の目的でなくても、「経営・管理」ビザの対象となります。
⑵安定性・継続性
安定性・継続性については、資本金だけではなく、営業種別、売上、利益見込み等から総合的に判断されます。
新たな事業の場合は、事業計画の具体性、合理性、実現可能性が求めまれます。
申請人は、事業計画に取引先、営業品目、年間売上、費用等を具体的に記載し、裏付ける資料を出来る限り提出して、安定性・継続性を説明すべきです。
事業の継続性と決算状況
事業は継続性的に行われることが求められますが、様々な要因で赤字決算となり得ます。
継続性は、単年度の決算状況を重視するのではなく、貸借状況等も含めて総合的に判断します。2年連続の赤字の場合は慎重に審査されますので要注意です。
具体的には、直近二期の決算状況により次のとおり取り扱われます。
① 直近期又は直近期前期に売上総利益がある場合
a 直近期末に剰余金がある場合又は剰余金も欠損金もない場合
直近期に当期純利益があり、同期末に剰余金がある場合には、事業の継続性に問題はありません。
また、直近期に当期純損失となったとしても、剰余金が減少したのみで欠損金とまでならないものであれば、事業継続に重大な影響があるまでとは認められないことから、この場合にも事業の継続性があると認められます。
したがって、直近期末において剰余金がある場合又は剰余金も欠損金もない場合には、事業の継続性があると認められます。
b 直近期末に欠損金がある場合
(ア)直近期末に債務超過となっていない場合
事業計画、資金調達等の状況により、将来にわたって事業の継続が見込まれる可能性を考慮し、今後1年間の事業計画書及び予想収益を示した資料の提出を求めることとし、
事業が行われていることに疑義があるなどの場合を除いて、原則として事業の継続性があると認められます。
ただし、資料の内容によっては、中小企業診断士や公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が評価を行った書面(評価の根拠となる理由が記載されているものに限る。)の提出をさらに求められることがあります。
(イ)直近期末に債務超過であるが、直近期前期末では債務超過となっていない場合
債務超過となった場合、一般的には企業としての信用力が低下し、事業の存続が危ぶまれる状況となります。事業の継続性は認め難いですが、債務超過が1年以上継続していない場合に限り、1年以内に具体的な改善の見通しがあることを前提として事業の継続性を認めます。
具体的には、中小企業診断士や公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が、改善の見通し(1年以内に債務超過の状態でなくなることの見通しを含む。)について評価を行った書面(評価の根拠となる理由が記載されているものに限る。)の提出を申請者に求めることとし、当該書面を参考として事業の継続性を判断します。
(ウ)直近期末及び直近期前期末ともに債務超過である場合
債務超過となって1年以上経過しても債務超過の状態でなくならなかったときは、
事業の存続について厳しい財務状況が続いていること及び1年間での十分な改善がなされていないことから、事業の継続性があるとは認められません。
②直近期及び直近期前期に共に売上総利益がない場合
企業の主たる業務の売上高が売上原価を下回るということは、通常の企業活動を行っているものとは認められず、仮に営業外損益、特別損益により利益を確保したとしても、
それが本来の業務から生じているものではありません。
単期に特別な事情から売上総利益がない場合があることもあり得ますが、、二期連続して売上総利益がないということは主たる業務を継続的に行える能力を有しているとは認められません。
この場合には事業の継続性があるとは認められません。
※上記の主な用語の説明
直近期:直近の決算が確定している期
直近期前期:直近期の一期前の期
売上総利益(損失):純売上高から売上原価を控除した金額
剰余金:法定準備金を含むすべての資本剰余金及び利益剰余金
欠損金:期末未処理損失、繰越損失
債務超過:
負債(債務)が資産(財産)を上回った状態(貸借対照表上の「負債の部」の合計が同表の「資産の部」の合計を上回った状態のこと)
⑶直近期決算で当期純損失に関する許可・不許可事例
①許可事例
直近期決算書によると、当期損失が発生しているが、債務超過とはなっていない。
また同社については第1期の決算である事情にも鑑み、当該事業の継続性があると認められた。
参考指標
売上高総利益率:約60%、売上高営業利益率:約-65%、自己資本比率:約30%)
②不許可事例
直近期決算書によると、売上総損失(売上高-売上原価)が発生していること、
当期損益は赤字で欠損金もあり、また、欠損金の額は資本金の約2倍が発生していることから、当該事業の継続性が認められなかった。
参考指標
売上高総利益率:約-30%、売上高営業利益率:-1、000%超、自己資本比率:約-100%)
※
各種計算の手法は提出された直近期の決算書をもとに以下のとおり算出(利益はプラス、損失はマイナス。)。
売上高総利益率=売上総利益(損失)÷純売上高×100
売上高営業利益率=営業利益(損失)÷純売上高×100
自己資本比率=自己資本(剰余金又は欠損金を含む)÷総資本×100